タベルナクル額縁の持つ役割

『タベルナクル』は、建築用語で言えば聖人像などを置くための壁龕を指していますが、元々はユダヤ教で幕屋を意味する言葉でした。タベルナクル額縁においては、屋根の部分が絵画を入れる部分よりも張り出していることが特徴です。中世では、家庭用の絵の大半は肖像画で、ミニチュアの建築物が祭壇画を囲むように描かれていることが多かったそうです。これらの絵は『磔刑図』にも見られるようなゴシック様式の額縁が使われていましたが、徐々にタベルナクルの形を取った額縁に代わっていきました。これは、十五世紀のイタリアで、古典的・古代的な建築様式を取り入れるようになったことがきっかけと言われています。タベルナクルの額縁は、実際に描かれている肖像を、周囲にある雑多な物から聖別するという役割を持っています。