額縁の歴史と伝えることの意義

額縁をとらえる人々の印象は、収めている絵画の移り変わりと決して無縁ではありません。現代の絵画が周りに氾濫している数々のリアルな表現形態、例えば写真やテレビなど、と比較するとどうしてもリアルさには太刀打ちできません。となれば勢い画家の感性にまかせた虚構を描いていくしかなくかってきます。

昔の人は絵画に自分の印象をダブらせた幻想を与えてくれたと言います。そこには絵画の存在感があったのですが、現代はリアルと抽象という両極が存在はしていてもその中間を味わうという習慣が乏しくなってきているといえるのかもしれません。

それゆえにミスマッチと思えるような絵画と額縁が平気で飾られていたり、単にきれいというだけで額縁を選択したり、さらには額縁なしで絵画を展示したりが当たり前のように日常茶飯事で行われているように思えてなりません。究極的に絵画と額縁という不可分とも思える組み合わせがいとも簡単にくずれ、昔の手の込んだ芸術作品ともいえる額縁は単なる昔の遺物としかとらえられなくなっているのではないでしょうか。